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【君だけのサンタクロース】キュカズ [パラレル]

昨日upすべきだったクリスマスネタ。
諸事情により今日・・・!!!orz

しかも綺麗に途切れてますが続きます。
おそらく続きをupするのは来年じゃなかろうか。
それでもいいよ!という方だけどうぞ!!






【キミだけのサンタクロース 前編】

オレの名はキューマ。
12月24日の夜中、良い子にクリスマスプレゼントを贈るのが仕事のサンタクロース。の、卵だ。
サンタクロースの卵の仕事としては、毎年どの子がどんなプレゼントが欲しいか、などの調査結果集計や
サンタクロースが乗るトナカイの世話、それから袋や洋服の解れ直しなど地味な物。
プレゼントを配るには卵として相当長い年月修行を積まなきゃいけない。

そんなある年の事だった。

「キューマ、今年は俺に同乗してみないかい?」

先輩のサンタクロースから声がかかって、俺は驚いて解れていた服を直していた針を人差し指に刺してしまった。
そんな痛みすら感じない程に俺は興奮して先輩に訊ねる。

「同乗って、一緒に行って良いんですか!?」
「頑張ってくれているからなぁ。キューマなら来年あたり、昇格出来ると見越して」
「本当に!?」
「まぁ、昇格させるかどうかは長次第だが、放っておいたって近いうちお前に他の奴から声が掛かるよ。
 一人前に成る為には、先輩に付き添って下界に降りてインターンシップしなきゃいけないし」

喜びで駆け出したい気分になった。
声を掛けられたって事は、もしかしたらあと少しで一人前に成れるかも知れないと言う事なのだから。

「キューマ、いいなぁ」

幼馴染のロロにその事を言うと、彼女は笑顔で、頑張ってね、と言ってくれた。

12月24日。クリスマスイヴ。
その日下界には雪が降っていた。

「じゃ、行こうか」

先輩がトナカイの手綱を握る。既にプレゼントは積み込み済みだ。

「気をつけて」
「邪魔しないようにな」
「頑張ってね」

他のサンタクロースが口々に励ましの言葉を送ってくれる。

「行ってきます!」

ロロに手を振って、俺は先輩の後ろの座席に座った。
真夜中12時。下界日付は12月25日になったばかりだ。
鐘が鳴る。
13人のサンタクロースが一斉に空へ飛び立った。
これからサンタクロースの仕事が始まる。

プレゼントを貰える子供は決まっている。
ちなみに貰える子供は各地域のサンタクロースが餞別した後、サンタクロースの長が更に餞別を加える。
彼らは1年良い事をした子供に限りだ。
下界で言う子供ー・・・つまり、二十歳未満。
更に言えば、毎年連続でプレゼントを貰える子供も居れば、貰えない子供も居る。
俺が知る中では、5年連続で貰ってる子が居るし、先輩に聞いた話では貰える予定だった子が12月23日、つまりクリスマスイヴ前日に犯罪を起こして貰えなくなったと言う子も居る。

「ほら、キューマ、ぼさっとしてる場合じゃない。最初の家が見えてきたぞ」

先輩の声が聞こえて、ハッと顔を上げると一軒の民家が見えた。
そのまま家に直進していく。
トナカイも俺達も家の壁をすり抜けた。これは、サンタクロースが持つ特別な力。
勿論俺達の姿は下界の人間には見えない。
降り立った先には、黒髪の小さな女の子。
くぅくぅと小さな寝息と立てている。

「海賊の娘だ。かなりの怪力の持ち主らしいぞ。名前はー・・・確か、クーだったかな」
「はぁ」
「この子のプレゼントを袋から出してくれ」
「はい!」

袋に手を入れると、自動的にプレゼントが出てくる仕組みになっている。
この子のは随分大きな袋だ。

「欲しいものは、パパの人形。だったね」

先輩は枕元に袋を置くと、さっさとトナカイに乗り込んでしまう。
俺もそれに続いた。

「メリークリスマス、良い夜を」

しゃん、と鈴が鳴って、またトナカイは走り出した。

「想像してごらん。朝になったら、あの子はどんな顔をするだろう」
「それはー・・・。・・・笑顔だったら、良いですね」
「な。そうだろう。俺達は皆に笑顔を配ってるんだ、これほど素敵な仕事は無いね」
「・・・はい」

外気は冷たかったが、何だか胸の底が温かくなるのを感じた。
トナカイは猛スピードで大空を駆け回る。
もう少しで夜が明けるという時間に、最後の家へ辿り着いた。

「この子で最後ですね」

枕元に用意された靴下にプレゼントを詰めて先輩に言うと、先輩は首を横に振って

「いいや、あと一人居るんだ」

と言った。

「でも、宅配リストにはこの子で最後・・・あれ?」

分厚い宅配リストのその最後に、地域が違う子供が紛れ込んでいた。
間違いだろうかと思ったが、先輩はそのリストを手に取る。

「さぁ、彼で最後だ。うかうかしていると日が昇るぞ。行こうか」

慌ててトナカイに乗る。
場所はここから少し離れた街だ。
国境を越えてしまうその街は明らかに先輩の宅配地域から外れているのに、何故。

「この街には、彼しか居ないんだ」
「子供が、ですか?」
「いいや。彼しか住んでいないのだよ。大きな街にたった一人で住んでいる。数年前には、彼の他にもう一人居たが居なくなってしまった。だから今は、彼一人だ」
「大きな街に独りって・・・寂しくないんですか?何で他の場所に移住しないんだろう」
「ある日を境にー・・・丁度、彼が街で独りぼっちになってからかな。彼は記憶を失った。何故だかは分からない」

なるほど、確かにこの宅配リストに載っている彼の顔はー・・・どこか物憂げで悲しそうだった。

「その年からか、彼がリスト入りするようになったのは」
「記憶を失った事でリスト入りしたんですか?」
「かもね。さぁ、見えてきた」

街は明かりが点いておらず、真っ暗だった。
店のネオンどころか街灯もない。
その中の一軒家にトナカイは飛び込んでいった。

「こんばんは」

赤髪に白い肌。
彼は灯された暖炉の前で眠っていた。

「布団も掛けないで・・・コレじゃ風邪を引く」

元々人の面倒を見るのが好きな俺は、ぐるりと周りを見渡して目に付いた彼のコートを彼に掛けた。
すると、彼の手が俺の袖を引く。

「!?」

どきり。
驚いて心臓が飛び出そうになる。
正体を見られた・・・。
冷や汗と静寂。
しかし彼の瞳は開く事は無かった。
静かな寝息だけが零れる。

「キューマ、何をしてるんだ?」
「いいえ、何も!」

伸ばされた手は既に俺の下を去っていた。
少し、残念な気持ちが混じりながらもほっと胸を撫で下ろす。

「・・・れん・・・」

小さく彼が呟いた。
誰かの名前。
そして、その閉ざされた瞳から流れる一筋の雫は頬を伝った。

悲しい夢を見ているのだろうか。
なら、俺は精一杯祈ろう。
朝キミが目覚めて置かれたプレゼントを見た時、その表情が笑顔に変わるように。

「メリークリスマス、良い夢を」

そっと前髪を書き上げて額にキスをした。
こうしてサンタクロースの仕事が終わる。
下界に訪れるのは、また来年の冬ー・・・。


2007-12-25 13:00  nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
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コメント 2

李委

それでもいいよ!!ですヽ(´ー`)ノ
ふふひ、久しぶりに御馳走様でしたっ´`
by 李委 (2007-12-27 19:59) 

愁伽&依真

>李委様
 クリスマスどころかすでに正月も去っていたというオチが!!
 なるべく早く書き上げますのでしばしお待ちをおお!!
by 愁伽&依真 (2008-01-10 16:50) 

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